サーチファンドは、プライベートエクイティ投資の仕組みの一つです。「サーチャー」と呼ばれる1人または2人の個人が、メンターとなる投資家を含む少数の投資家グループと共に投資会社を組成(ファンドレイズ)し、非公開企業のサーチ、買収を行った後、経営を行い企業価値の向上を目指すというプロセスにより構成されます。

このページではサーチファンドの歴史や仕組みについて概要を説明します。

サーチファンドの歴史

「サーチファンド」という用語は1984年にHarvard MBAに起源を持ち、その後10年間でStanford GSBで研究され、the Director of the Center for Entrepreneurial StudiesであるIrving Grousbeck教授が草分けとなり、現在に至るまで約700を超える(トラディショナル型)サーチファンドが形成されています。成功したサーチファンドの大多数は、経営経験が無く、優れたキャリアと起業家精神を持つMBA卒業生によって始められました。

サーチファンドの基本形となるトラディショナル型サーチファンドの状況はStanford GSB(米国)とIESE Business School(スペイン)によって纏められています。近年トラディショナル型サーチファンドの数は北米やその他の地域で急速に増加しています。以下の表では両大学が2年一度発行するレポートからサーチファンドの実績推移のグラフを引用していますが、近年サーチファンドの活動がますます活発になっていることがよく分かります。(Fund Raised: サーチファンドの立ち上げ件数、Aquisitions: サーチファンドによる承継件数、Exits: サーチファンドによる承継企業の売却/MBO/IPOの件数)

北米域(アメリカおよびカナダ)のトラディショナル型サーチファンド実績推移

Stanford GSB, Search Fund Study 2022 – Selected Observations

全世界(北米域除く)のトラディショナル型サーチファンド実績推移

IESE, International Search Funds–2022 – Selected Observations

サーチファンドの仕組み

サーチファンドは、「サーチャー」と呼ばれる1人または2人の個人が、メンターとなる投資家を含む少数の投資家グループと共に投資会社を組成(ファンドレイズ)し、非公開企業のサーチ、買収を行った後、経営を行い企業価値の向上を目指すというプライベートエクイティ投資の一つです。(期間は目安)

サーチャーにとってのサーチファンドのメリット

サーチャーがサーチファンドキャリアを選ぶメリットは大きく2つあります。

キャリアの早い段階で経営者になれる

伝統的な企業のサラリーマン社長の多くが50代以上であるのに対し、サーチャーの多くが30代で企業を承継し経営者となることができます。プロ経営者のポストは原則として経営経験者に限られることを考えると、30代から経営者というキャリアパスを経験できることで今後のキャリアの幅を広げることに繋がると言えるでしょう。

経営成績に応じて相応のリターン(キャリー)が見込める

トラディショナル型サーチファンドの契約雛形では、サーチャーの経営成績に応じて株式の最大25%~30%が付与される設計となっています。例えば株式価値10億円の企業を売却した際に株式の25%が付与される場合、サーチャーは2億5千万円分の株式を得ることになり、経営期間中の役員報酬を加えれば、他のキャリアで得られる期待給与と比較しても相応のリターンを得ることが可能です。

資金調達に応じて異なる2種類のサーチファンド

サーチファンドには資金調達方法に応じて大きく2つのスキームがあります。

トラディショナル型サーチファンド

トラディショナル型サーチファンドは、サーチャー複数(10~20人)の投資家から資金を集めてファンドを作ります。投資家は、知人友人、PEファンド、ファミリーオフィス、または個人投資家である場合があります。そのファンドを通して、サーチャーは承継先企業から株式を承継し、先代オーナーより事業承継を行います。トラディショナル型サーチファンドはStanfordやIESEが各パフォーマンスを学術研究の一環として検証しており、海外における過去実績では高い投資収益率が証明されています。

アクセラレータ型サーチファンド

アクセラレータ型サーチファンド(シングルインベスターモデルとも呼ばれます)では、サーチャーは単一の投資家(企業または時には個人)から資金を提供され、その唯一の投資家から給料、アドバイス、サポートを受けます。唯一の投資家は、PEファンド、ファミリーオフィス、個人投資家、またはアクセラレーターファンドである場合があります。特にアクセラレーターの場合、サーチャーに共通のサービスを提供することがあり、そのサービスにはトレーニング、データベースアクセス、共有インターン、メンタリング、銀行紹介、および事前に整理された法律関係や会計関係のサポートが含まれる場合があります。

トラディショナル型及びアクセラレータ型サーチファンドはそれぞれ長所と短所がありますが、これらの比較については以下の記事でまとめています。

まとめ

・サーチファンドは1984年にHarvard MBAで始まり、Irving Grousbeck教授によってStanford GSBで発展した。
・現在までに700以上のトラディショナル型サーチファンドが形成され、主にMBA卒業生が創設者。
・サーチファンドの活動と成功例は北米を中心に増加している。
・サーチファンドは投資家グループと共に非公開企業を買収し経営するプロセス。
・サーチャーには早期経営者経験と経営成績に基づくリターンがメリット。
・資金調達はトラディショナル型とアクセラレータ型の二つに分かれる。
・トラディショナル型は複数投資家から、アクセラレータ型は単一投資家から資金を得る。